【完】スキャンダル・ヒロイン
Act6 動き出したお互いの気持ち。
Act6 動き出したお互いの気持ち。
まさか再びたっくんと対峙する事があるとは夢にも思わなかった。
目の前には気まずそうに視線を下に落とすたっくん。私の恋をした人。りっちゃんに誘われた合コンで一目惚れして、人生で初めて猛アタックした人。
それだというのに、ロマンチックな花火の下で全くときめかない。確かに、この人を好きだったはずなのに。
「本当に俺なんかでいいの?!」
「俺も静綺の事好きになりそうかも」
「もう少し待ってて欲しい。今度俺から気持ちを伝えさせて欲しい。静綺を悲しませる想いは絶対にさせない」
彼からの一言一言で一喜一憂していた自分だったのに。悲しませる事は絶対しないと言ったのに、私の友達をいつの間にか好きになって、付き合っていたような男。
でもそこにもう恨みや憎しみは無かった。悲しみもどこかへ吹っ飛んでいってしまっていた。そう考えてみれば、こうやってきちんと向き合う事は大切だったのかもしれない。だからこんな機会をくれた姫岡さんには感謝しなきゃ。
「たっくん元気そうだね」
「うん。静綺も。」
「しおりとも仲良さそうで安心したよ~…。
あの私が言うのもなんですが…しおりを幸せにしてあげてね」
心からの本音だった。あの時もたっくんからは何も連絡がないまま、終わってしまった。
けれどももしもたっくんから真っ直ぐにしおりを好きになったとハッキリ告げられたら…そりゃーショックでりっちゃんに泣きついて数日は立ち直れなかったと思うけど…
それでも私はたっくんとしおりの背中を押せていたと思う。
心に引っかかっていたのは、たっくんが私に何も告げずにしおりと付き合ったからなんだ。