【完】スキャンダル・ヒロイン
そのキラキラとした瞳が……何を訊きたいかは大体分かるけれど、何から話せばいいのやら。
りっちゃん的には芸能事務所の寮について興味があったのだろう。まるで自分たちとは世界の違う人種が募る場所だ。
とはいえ、真央以外はテレビでも見たことのないようなタレントさんだし、生活は案外普通である。別世界の人と思っていた芸能人でも、一緒に生活してみれば案外私達と変わらない所も多くて。
この1か月にあった事は電話やラインではあんまり話さなかった。溜まっていた分の話を一気にすると、りっちゃんは顔を緩ませて「キャー」とまるで恋する乙女のような声を上げた。
そして興奮で鼻息を荒くしながら言った。
「それって姫岡真央絶対に静綺の事好きじゃん!」
「ないない。絶対そんな事あるわけないッ!今の話をどう聞いたらそうなるの?!
大体真央はすっごく意地悪だし、きっと人の事をからかって楽しんでるだけだよ」
「キャー。真央だって!呼び捨てにしちゃって羨ましいーッ。
だって毎日一緒にいるんでしょう?それに浴衣を買ってくれて一緒に花火大会まで行ってくれて?
しかもしおり達の前で彼氏の振りしてくれたんでしょう?姫岡真央と一緒に花火大会に行くのだけでも羨ましいんだけどーッ。
大体何とも思ってない子をそんなに気にかけたりしないでしょー?」
「いやだからそれは…暇つぶしって言うか…。絶対人の恋路を馬鹿にしてんだよ、あの人は…」
「もう静綺は相変わらず鈍感だなぁ…。姫岡真央って超イケメンで超人気俳優なんだよ?そんな人がただの暇つぶしでただの女子大生にそこまでしてくれるわけないじゃんかよ」