【完】スキャンダル・ヒロイン
Act8 好きにならなければ良かった。
Act8 好きにならなければ良かった。
真央のドラマの撮影が始まった。
坂上さんと共に朝いちで寮を出ていく事も多くなった。そして帰って来るのが深夜過ぎになる事もある。
1年ぶりの本格復帰ドラマだ。本人も気合いが入っているが、彼の専属マネージャーである坂上さんはもっと気合いが入っているだろう。
私はもっと早起きをして、朝ご飯を食べる時間がない時は保冷バックに保冷剤を入れたお弁当を真央に持たせた。何よりも彼の体が心配だった。
「これ、ロケ先で食べてください。坂上さんも。
栄養たっぷりに計算して作ってあるお弁当なんで…」
「お前…俺の為に…」
受け取った真央は少しだけ感動した顔をしていたけれど、私はツンと横を向いて「’坂上さん’も食べてくださいね」と彼の名を強調した。自分ながら素直ではない性格だとは思っている。
真央は少しだけ落ち込んだように肩を落とすので、悪い事をしてしまった気持ちにもなるのだが。
「うれし~いッ。僕の分まで~…ありがとうねぇ。静綺ちゃん!」
対して坂上さんは素直に喜びを表現する。
「食べられるもんが入ってるのかよッ。俺が腹を壊したら困る」
さっきまで落ち込んで肩を落としていた癖に、どうしていきなり高飛車になるのよ。
「はいは~い…大丈夫ですよぉ~だ。朝は食べやすいようにパンにしといたので車の中ででも食べてくださいな。
お弁当は保冷剤が入ってるけれど余りにも遅くなるようだったら捨てちゃって下さい」