【完】スキャンダル・ヒロイン

「はぁー?!なんでそこで岬が出て来るのか意味分かんねぇし!」

「元さやもいいよねぇー。あの子と真央ってお似合いだったじゃん。
真央には可愛らしい女の子が似合うよ」

だから俺が誰と似合うかなんてお前が決めつけるな。

昴の撮影現場に到着して、軽快に降りて行った。風を切って歩く後ろ姿を見て、いよいよヤバいんじゃないかと思い始めた。

男の俺から見ても、昴は男前だ。俺が女だったら確実に昴に惹かれていたかもしれない。
あぁ具合いが悪い。最近は体調も万全だったのに、具合いがマジで悪くなってきた。


頭を切り替えなくては――。

この2時間ドラマは復帰のチャンスだと思っている。せっかく事務所がくれたチャンスだ。昴と日にちが近いドラマ。しかも同じ2時間のスペシャルドラマ。

まだ俺は1クールのドラマや拘束時間の長い映画は撮れないかもしれない。それでも撮影期間がわりと短めな2時間ドラマなら…っ出演をOKした訳だが。

プライベートと仕事の事で頭が痛い。

もしも今回のドラマ…視聴率が悪かったら。昴のドラマに圧倒的な差をつけられたら…それを考えだすと途端に動悸が速くなって目眩に襲われる。

きっと昴は俺と自分を比べたりはしない。それだというのに何故俺は…。

ここで失敗をしてしまったらネットで叩かれる。俺は実力がないって、もう俺の時代は終わったと面白おかしく書き立てられるだろう。子役上がりのただの裸の王様が、事務所の力で仕事を貰っているだけだと。

汗が止まらない。呼吸が浅くなっていって…。
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