【完】スキャンダル・ヒロイン

「はーい!おっけー!一旦休憩に入ろうか」

撮影現場に入って、数時間。

今日は外ロケだ。30度を優に超える真夏日。アクションシーンの多いこのドラマだけど、代役は一切立てなかった。だから思っていたよりもずっと体力を消耗する。

けれど俺の仕事を見守る坂上さんの方が汗がびっしょりで、それでもこの人は笑顔を絶やさない。社内でも評判が良く、こう見えても敏腕マネージャーと呼ばれる彼が…仕事もろくに出来ない自分に未だに良くしてくれるのはいささか疑問だが…こう見えてとても感謝している。

俺なんてとっくに見放されていてもおかしくないのに。どうして人はこんなに優しくいれるんだろう…。

「真央くんお疲れ。さっきのシーンかっこよかったよぉ。真央くんってアクションもこなすし、何でも出来るよね」

「まあな」

「疲れたでしょう。ほら座って座って。今冷たいタオルとお水持ってきてあげるからねぇ」

「いや…いいよ。俺は大丈夫。つーか坂上さんの方の方が暑そうだし、椅子に座っとけ。俺が水を持ってくる」

アクションシーンをこなした俺よりも、坂上さんの方がよっぽど汗だくだった。
無理やり椅子に座らせると嬉しそうな顔をして微笑んだ。

「真央くんは…優しいよね~~…」

「何の事だ?坂上さんはただでさえ小太りなんだから、マジでぶっ倒れるぞ。
水持ってくるわ。あーあっちぃ」

水を取りに行くと、偶然岬に会った。岬は俺の顔を見るなり嬉しそうに飛びついて来た。
こんなに暑いのに迷惑極まりない。
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