【完】スキャンダル・ヒロイン

元カノであるが故に、俺の事は十分理解している。

ぶりっ子と言われがちだが、サバサバとしていて実はアイドルらしくはない。どちらかといえば男らしい一面もある。

だから自分の原因不明の病気についても話してある。

体を調べても一向に病気は見当たらない。だからこそ厄介だと医者には言われた。精神科を紹介された時はさすがに参った。薬を飲めば一時的に症状は治まるが、完治には至らない。

特に仕事へ対してのプレッシャーが溜まると息が吸えなくなる。死んでしまう位苦しくなるのに、決して死ぬわけではないと言われた。


過呼吸だと。そんな病名がついてしまう弱い自分の心が大嫌いだった。

周りからの評価を気にしてばかりいる小さな自分が、ますます嫌いになっていく。それでも俺の仕事は人前に出る事だったから、誰かの前で自分を表現するこの仕事が大好きだったから。

お酒が入ると途端に弱音が止まらない。

「大丈夫だよ。治るよ。」

「でもやっぱり仕事を始めたら調子は悪くなるし…
こんなんで俺この先映画とか1クールのドラマとか出来るのかなー…」

「だいじょーぶだって!だって姫岡真央は天才でしょ?!」

「俺なんてさー…代わりも沢山いるしさー…昴でもいいじゃんー…もうすっかりあいつがグリュッグの顔じゃん。俺いらないじゃんか」

「そんな事ないよー!昴はまあかっこいいけどさぁ」

「だよなぁー昴かっこいいし性格もいいしーそりゃー静綺も昴を好きになるよなー…」

「静綺?」
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