【完】スキャンダル・ヒロイン

私と真央の雰囲気が悪いのが伝わって、寮の皆もどことなく気を遣っている。

原因なんてひとつなのに。私が真央を好きになってしまったからだ。無意識に意識をして、何となく避ける。

真央も真央でいつもの調子で「何だお前」の一言でも言ってくれたら楽になれるのに。出会った頃のようの態度でいてくれたら、こっちだって気持ちを隠して前のように接する。


私は意気地なしだ。この芽生え始めた気持ちははなから伝えるつもりはない。

傷つくのも嫌だ。芸能人に恋をするなんて馬鹿らしいし、あんな可愛いアイドルと付き合っていた人がごくごく普通の女子大生を相手にするとは到底思えない。

普通の女子大生だし恋愛偏差値も低いし、女としてのレベルもどうかと思う。自分に自信がない。好きだと気持ちを伝えて馬鹿にされて惨めになるくらいなら黙っている。

私って本当にダメダメだ。

「おはよう……」

「おはようございます…」

それでも毎日目で追ってしまうのは真央の姿だけ。

読みすぎて直ぐにボロボロになってしまう台本の為に台本カバーをこの間買ってきたけれど、それすら渡せずにいた。

もうドラマの撮影も終わってしまうだろう。日に日に真央にも疲れが溜まっているようにも見えた。自分の気持ち云々の前に彼の体調がとても心配だった。

「そう言えば明日のライブ終わったら楽屋に遊びにおいでよ」

夕ご飯を食べている時豊さんから言われた言葉で思い出した。
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