【完】スキャンダル・ヒロイン
真央は何だかんだ優しい奴だから私の気持ちを全部彼へぶつけてしまえば、私への気持ちがなかったとしても真剣に悩むと思う。
それは困らせる事になる。私だって馬鹿じゃないから芸能人を好きになってどうにかなるなんて思ってない。
「人の気持ちって難しいね…」
「そうですね…」
―――――
その日も22時過ぎに皆が帰って来た。私は皆の夕食の準備を済ませて、片付けをしている。
気になった事は真央が食事の半分を残した事だった。一度だけ怒ってオムライスを半分残した事はあったけれど、それ以外で真央がご飯を残す事はほぼない。
それどころかおかわりまでして、文句を言いながらも気持ち良い程ご飯を平らげてくれる。
少しだけボンヤリとして見たり、無口になって何か考え事をしているようにも見えて、様子はおかしいと思っていた。
気付けば視線は真央ばかり追っていた。いつもならば目が合ってこちらを睨みつけて「何見てんだよ」と一言位言ってもおかしくないけれど、目さえ一切合わなかった。
瑠璃さんや坂上さんが話を掛けてもボーっとしていて、明らかにいつもと様子が違う。返事はするけれど、どこか気のないような返事なのだ。
夕ご飯の片付けを終えて、明日の朝ご飯の下準備をして部屋に戻ろうとした時だった。
「静綺ちゃん。」
廊下でばったりと昴さんと会う。
昴さんは過酷なスケジュールでありながらいつも明るくって、元気だった。