【完】スキャンダル・ヒロイン
「ん~?とは言っても都内ってあんまりよく分からないんですよね。
それに昴さんの事もあるしあんまり人目のつくような場所は避けた方がいいですよね」
「アハハ、静綺ちゃんマネージャーみたいな事言う。俺はぜーんぜんどこでも平気なんだけど」
「駄目ですッ。昴さんは超有名人なんですからもう少し人目を気にすべきです。
女の子とふたりで食事に行くだなんてスクープされちゃったら大変じゃないですかー…
まぁ真央の言う通り私と昴さんが歩いてたとしてもぜんっぜん恋人には見えないだろうけど…」
「そんな事ないよ。静綺ちゃんみたいな可愛い子と歩いてたら、大滝昴一般人と熱愛か?!とか書かれちゃうかも」
私の頭を数回ぽんぽんと叩いて優しい眼差しを向ける。フォロー上手なんだから。
「静綺ちゃん焼肉とか好き?」
「お肉好きッ!」
「じゃあ焼肉行こうよ。良いお店知ってるし、焼肉なら気兼ねなく過ごせるじゃん?
匂いとかついちゃうの嫌かな?」
「全然嫌じゃないですッ。焼肉なんて久しぶりだから嬉しいなぁー」
そんな話を昴さんとしていたら、浴室の扉が乱暴に開かれて目の前にはお風呂上がりの真央の姿があった。
タオルで頭を拭きながら、私と昴さんを一瞥した。口をへの字に曲げて相変わらず不機嫌そうだったけれど、いつもの覇気は見当たらない。
「こんな所で話し込むなよ。邪魔だな」
力なくそう言うだけだった。
それにしても…お風呂上りだと言うのに顔色が悪い。