【完】スキャンダル・ヒロイン
そのまま私と昴さんの間をすり抜けて通り過ぎて行こうとした。腕と腕がぶつかり合った時に真央の体が異常に熱いと感じた。
昴さんが何かを言いかけたのは分かった。けれど、背中を向けて去って行く彼から視線が離せなかった。
思わず腕を掴んで引き止めると、真央は驚いたような顔をしてこちらを見下ろした。
「何だ……?」
私が掴んだ右手へ視線を落とす。その表情は切ない。
「あんた…熱い。」
ふいっと視線を逸らすといつも通り口を結んで手を振り払おうとした。
「お風呂入ったんだから熱いのは当たり前だろう…」
「違う!絶対おかしい。それにここ数日顔色もずっと良くなかった。
熱あるでしょう?」
「別に熱があったとしても大した事じゃねぇ」
「大した事だよッ…!明日坂上さんに言って病院に連れて行ってもらって。
いや今すぐに……」
そう言って坂上さんの部屋に行こうとしたら、今度は私の腕が真央に掴まれる。…やっぱり尋常じゃないくらい熱い。
そして眉毛を下げて、困ったような顔をするんだ。そんな気弱な表情しないでよ…。私あんたにはいっつも王様みたいな偉そうな態度で居て欲しい。そっちの方があんたらしい。
今の真央は直ぐにでも消えてしまいそうだった…。
「本当に平気だって…体調も別に悪くねぇ」
「嘘だよ。絶対に無理してるでしょう?」
「しつけぇなあ。無理なんてしてねぇって。」
そう言って私の手を優しく解いた。
「それに俺が少し位体調が悪かったとしてもドラマを作ってる人には迷惑をかけられない。プロなんだから…
俺がいないだけでどれだけ撮影が押すと思ってるんだ。
それにもうすぐクランクアップする…」