【完】スキャンダル・ヒロイン

「いいんですよ。気にしないで。それにもう怒ってないから」

その言葉に彼は安堵の表情を浮かべて、目を細めて口を閉じて笑顔を浮かべた。
その笑顔はいつもの意地悪な笑顔とは全然違う。まるで、天使だ―――。

男性に天使等と言葉を使って喜ばれるか分からないが、思い出した。幼い頃にテレビドラマに出ていた天使のような可愛らしい子役の男の子。

あの幼い頃の姫岡真央と今の真央が重なった。それは不思議な感覚だった。


そして真央は正面を向いて何もない天井を見つめながら、ぽつぽつと話し始めた。

「俺、芸能活動を1年間休んでいただろ?それって精神的な病気だったんだ。
過呼吸っつー奴でさ」

「過呼吸?」

それってあれだよね?

最近は芸能界でもその症状に悩まされて、自らカミングアウトする人もいる。
著名人でもその病気を公にしている人は昨今少なくはない。

昔はそう言う事を表立って公表する人は少なかった。精神的な病気はデリケートな問題だからある意味タブー視されてきた。


真央には何かしら抱える物があるのは他の人からぽつぽつ聞いていた。けれどそれは一過性の過労だとかそんな軽い物と考えていた。まさか彼の様な周りから認められている人間が、そんな大きな問題を抱えていたなんて。

「これが厄介でさ。いつどこで起こるのかも分からねぇし、どうやったらおさまるのかも見当もつかねぇ。
つーか死にたい程苦しいのに体は何ともないなんてマジで自分の体がどうかしちゃったのかと思って余計苦しくって…」
< 266 / 347 >

この作品をシェア

pagetop