【完】スキャンダル・ヒロイン

周りから認められて注目をされる。そんな気持ちは味わった事がない。だから私は彼の中で抱えていた本当の苦しみも100パーセントは理解出来ない。

「何とかやり過ぎしてきたんだけど、やっぱり限界つーのが来て芸能活動は休止させてもらっていたんだ。
俺って実はすごく弱いんだ。そんでこんなに弱い自分が大嫌い。
子役時代も周りの期待に応えようと頑張ってきたんだ。そして周りも認めてくれたけれど、それと同じくらい自分に悪意を向ける人間もいるって知った時は絶望したよ。
普通の子供に戻ろうと思ってももう手遅れでさ。世界中に姫岡真央って名前が知れ渡って、それでも演技が好きだったから高校を卒業してこの業界に戻ってきたけれど…
演技の評価をネットで見て、姫岡真央は大根役者だとか、事務所のお陰で仕事が回ってきているとか、そういう声に晒されているうちに周りばかり気にするようになってしまって」

「そんな…そんな事で自分を嫌いにならないでよ。弱くてもいいよ。強い人なんてこの世界にいないよ」

「けれど俺が生きて行く世界ではどうやら強くなければ押しつぶされるだけらしい」

弱々しく天井に手を伸ばす真央を見て、目の前の視界が歪んでいく。

「そのうちに仕事の面だけではなくってプライベートも取り沙汰されるようになってさ。そう考えたら益々怖かった。
あることない事書かれて演技以外の人間としての評価も周りから下されているような気持ちになって。そう考えたらここは地獄かって。
いっそもう全部仕事なんて辞めて芸能界から引退しようとも考えた。」
< 267 / 347 >

この作品をシェア

pagetop