【完】スキャンダル・ヒロイン

「それ、でも…あんたに悪意を向ける言葉以上に応援してくれる言葉は数倍多いんだよ…。」

心無き中傷の中心に立たされる気持ちは、一般人である私には理解が及ばない。
カメラを向けられて、その中心に立って輝かしい笑顔を向けるその裏に隠された苦悩の数々。

きっと真央だけじゃない。昴さんだって瑠璃さんや豊さんだって少なからず経験している筈。

それでも真央がここまで苦しむ理由は、本気でこの仕事と向き合っているから。何よりも大切に想っているからだ。そんな真っ直ぐで透明な曇りなき想い、見ている人全てに届けばいいのに。

「でも山之内さんも坂上さんもまた俺の演技を見たいって言ってくれる。
俺だって分かってる。俺に悪意を向ける人間よりも応援してくれる人の方が多いって事は――
だからこそ自分の弱さが許せなかった。俳優として凛と立っている昴のような強さが羨ましかった。
俺は自分で自分が嫌いだ」

自信満々で俺様な態度に隠された本当の心。

天邪鬼な彼の中にあった素直な気持ち。それに触れて私はますますこの人に惹かれていく。

「強くなくってもいい。弱くたっていいよ。病気になんか怯えないで…。頑張れる時に頑張って、頑張れないときは休んでいい。
だからお芝居を辞めるなんて言わないで。きっとこの世界にはあんたの演技を見て救われた人が沢山いる。
それにそんな弱い自分を嫌いにならないで。」

「どうしてお前が泣くんだよ」

横を向いた彼の、宙に向けていた手が私の頬を優しく撫でる。
自信満々で俺様なのはきっと自信が無くて弱い自分を隠すため。
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