【完】スキャンダル・ヒロイン
恋をするのは簡単だ。それに付随するように人を好きになる事も容易い。けれど恋が芽生えたからといって、相手も同じ気持ちになっているとは限らない。
優しい言葉を投げかけられて、勘違いするのはたっくんの件でこりごりだ。もうあんな想いはしたくない。傷つくのは怖いし痛いのだ。
それに真央は好きな人がいると言っていた。それは恐らく……。
私が国民的アイドルに敵う訳ない。それなら傷つく前にこの気持ちは封印したいところ。
それでも近くに居たらどんどん欲張りになって行く自分が怖かった。
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「あ、おはよー。」
「おはよう!…ございます…。」
朝いちでキッチンへ顔を出したのは昴さんだった。
そういえば真央の件で色々あって忘れていたんだけど、私昨日この人に告白されたんだった!
昨日…真央は芸能人で私は一般人。そこに恋が産まれるのは果てしなくあり得ない事だと思ったけれど…昴さんは私を好きだと言ってくれた。だからと言って真央も私を好きになってくれる保証なんてないけれど。
気まずさを感じているのも意識をしているのも私だけのようで、昴さんは冷蔵庫から牛乳を取り出していつも通り涼しい顔をしていた。
あーーー…でもこれはハッキリ言うべきだよね?
私の事を好きになってくれたのは勿論嬉しいし、昨日は悪魔が’こんな素敵な人の彼女になれるチャンス’と邪な事を囁いてきて、ぐらっと気持ちが揺れかけたけれど…。
ここはハッキリ断るべきだろう。
「昴さんあの……」
「あーーーー」
「昨日の事なんですけど」
「あーーーー」
「あの!真面目に聞いて下さい!」
耳を塞いで不敵な笑みを浮かべた彼は「嫌だね」と子供のような事を言う。