【完】スキャンダル・ヒロイン
「私よく考えたんですけど」
「だから聞かないって」
そう言って、私の唇に指を押し当てる。
思わず真っ赤になってしまうのは、余りにも昴さんがかっこよすぎるせいよ。
行動ひとつとっても女の子をキュンキュンさせるってのが分かっててやっているんだから。
「たった1日はよく考えたうちに入りません」
私的には1日考えようが1年考えようが答えは変わらないような気もするんだけど。
いや?そうでもないか?
私の中の悪魔がまた誘惑をかけてくる。それはとても甘くて狡い囁きだ。
「自分と俺が釣り合わないとか、芸能人と一般人だからって言葉は聞きたくないからね」
正に私が使いそうな言い訳を熟知していらっしゃる。
女性の扱いに慣れている昴さんと付き合えたらそりゃあ楽しいだろう。超人気芸能人で自慢の彼氏。
あぁ……私の中の悪魔がまた甘い囁きを耳元で謳う。ぶんぶんと頭を横に振って冷静になる。
「俺誰かさん程鈍感じゃないから静綺ちゃんの気持ちは分かってるつもりだけど?」
「へ?」
「昔っから人の気持ちなんて見てりゃ分かるんだよね。
それでも俺と付き合ってる方が楽しいし、穏やかな気持ちで日々を過ごせると思うんだよねぇ~ッ」
「言わないで下さい!」
「え~?どうしよっかなぁ~?」
昴さんの指が遊ぶように私の髪に触れる。
その大きな瞳に見つめられたら誰だってドキドキしちゃうんだから!その指をまるで虫を振り払うように払ったら、昴さんは声を上げて笑った。