【完】スキャンダル・ヒロイン
「反応が面白い」
「もう止めてくださいよッ」
「おいッ……」
昴さんと話をしていると、食堂の入り口で仁王立ちをしている真央の姿。低いハスキーボイスが響き渡る。
顔色はすっかり良くなっていて、声も元気そうだ。何よりも私と昴さんを交互に睨みつける生意気な視線。
いつもの真央に戻っている。
ずかずかとキッチンまでやってきて、私と昴さんの間に入り体を引き離す。
「朝からうるせぇんだよッ。
ぬぁーにが’止めてくださいよッ’だ!
いちゃいちゃするんじゃねぇよッ
気持ち悪いんだよ。お前ら。
あー朝から気分が悪いわぁー。二流映画のラブストーリーを見た気分だ。病気が再発したら昴とブスのせいだわぁ~」
「なッ!ブスって!」
ベッと舌を出して生意気な顔。思わずおでこをはたくと、今度は大袈裟に痛がる振りをして悪戯な笑顔を見せる。
いつもの調子に戻っている。それどころか完全復活?元気のない姿よりも少しくらい毒づく方が真央らしい。そんな真央の様子を見て心から安心した。
それは私だけじゃなかったけれど。
「真央ぐーーーんッ」
起きて来た坂上さんは真央の姿を発見すると涙声になりながら彼へと抱き着く。
「うわッ止めろよ!」
「体は?体調は大丈夫なの?」
「大丈夫だ!すっかり良くなった。それよりベタベタ引っ付くな!あんたはただでさえ暑苦しいってのに…
手汗でベタベタして気持ち悪ぃ!」
それでも坂上さんは真央に抱き着いたまま頬ずりまでし始める。
迷惑そうな顔をして坂上さんの体を引き離そうとするが、中々彼は真央から離れようとはしない。
その様子を見て笑ってしまった。