【完】スキャンダル・ヒロイン
「あのー…豊さん…?」
「なあに?」
「もしもの話ですよ?もしも。
自分に全く釣り合わない相手を好きになったらどうしますか?」
「どうして自分と釣り合わないって決めつけるの?」
豊さんの真っ直ぐな瞳に見つめられて、何故か泣きたくなった。
私の情けなくて小心者の心が、見透かされているような気がして。
「どうしてって…そりゃあ色々あるでしょう…。容姿が釣り合っていないとか…
例えば彼は皆からの人気者だったり、特別な仕事をしていたり…
釣り合っていない部分っていうのは沢山…
釣り合いの取れていない人を好きになってもどうしようもないじゃないですか。」
これじゃあ誰の事を言っているのかバレバレだ。恥ずかしくって消えたくなる。
「ん~……それって言い訳してるだけに聞こえる。」
「言い訳?」
「容姿が釣り合っていないとか人気者とか特別な仕事をしている。
全部劣等感からくる言葉だよね。でもそういった違いで自分の気持ちから逃げるのは楽だよね。」
豊さんの言葉がずきりと胸に突き刺さる。
’逃げている’間違いない。見守っていれたら幸せなんて綺麗ごとだ。一歩一歩近づくごとに欲張りになって行く自分がいるのに。
「大切なのは何かを思った次にそれを行動に移せるかどうかだよね。
だって恋をするのに資格なんていらないし、誰でも自由に人を好きになる権利はある。相手が誰であろうと
釣り合いが取れていないって自分に言い訳をして、恋をしたのに何もしないで諦めるのが1番馬鹿げていると思う。
きっと行動をしてない後悔と行動をした後悔って同じ言葉でも別物だと思うから」