【完】スキャンダル・ヒロイン
好きだと言う想いを告げるのは止めた。それは行動をしないと決めた事と同じ。
豊さんの言いたい事は分かる。でもどうしても自分に自信がないんだ。そんな弱い自分が未だに心の中で燻ぶっていて、傷つくのが怖いと嘆く。
期待してそれを裏切られるのは辛い。それは前回の恋愛で充分学んだ。
だからこそ今度は私を好きになってくれる人と幸せな恋愛を――。そんな事を考えていたら、チャンスは目の前にやって来た。
昴さんにハッキリと無理だと伝えているつもりでどこかで迷いがあるから、私の中の気持ちがぐらぐらと揺らついているから、それを昴さんに見透かされているから、彼はきっとまだ諦めないと言うのだろう。
けれど真央との関係を壊すのが怖い。
その後。
真央はドラマのクランクアップまで走り抜けた。
昴さんもだ。
その後も番組の宣伝でバラエティ番組や情報番組に出演していって、彼らの姿をテレビで見ない日は無かった。
真央とは以前のような関係に戻って、喧嘩の絶えない日々だがその普通が何より私には嬉しかった。
―――――
8月の終わり。
まだまだ残暑の厳しい毎日の中で、夏の音を奏でていたセミが最後のあがきのように大合唱をし始めて
何気なく空を見上げたら夏の雲がなくなって、青空が高く見える。
夕涼みをしているとふと涼しい風を頬に感じ、空気が変わって秋の匂いを鼻が霞める。
入道雲が減って行って、いわし雲が見え始めた頃、夏の終わりを感じた。
皆と一緒に過ごしたひとつの季節が終わる。それは何かが終わるのと同じ事でもあった。