【完】スキャンダル・ヒロイン
初めは木々が生い茂ってどこか不気味に感じていた古い建物も、こうなって見れば愛しく感じるもので。
その日は珍しく真央が1日オフで、ふたりで庭に出て今年最後であろうスイカを食べていた。
「おいッ!お前俺の足へ種を飛ばすなよ!汚ったねぇなぁー……」
「種飛ばしはスイカの基本でしょ」
ぷっぷっと口から種を飛ばすと、それは風で右へ曲がって行って再びサンダルを履いている真央の足の先へ飛んでいく。
迷惑そうにそれを振り払う真央は、スイカを口に含むと私の方へ向いて顔へ種を飛ばす。
「ちょ、汚いなぁー…わざとするのは違うでしょう?!」
「お前から飛ばしてきたんだろう?!俺のこの絹のような肌に!」
「仕方がないでしょ?!風がそっちに向かって吹いているんだから」
「風の向きを変えろ!」
「さすがの私でも天候までは操れないわよ。そうよ、私とあんたの座る方向を逆にすればいいんじゃない」
「ほう…中々頭が良いなお前」
そう言って私はさっきまで真央の座っていた所へ、そして真央は私が座っていた方へ移動する。
すると風が途端に方角を変えた。ぷっと吐き出したスイカの種は再び真央の足へと綺麗に着地した。
青筋を立てて「おーまえー」とこちらへ向かって凄む彼。
「だって風が…!」
「お前絶対風を操ってる!」
そう言って、私の肩へ手を掛けて体を引っ張る。
「ちょっと苦しいってば!死ぬ死ぬ!」