【完】スキャンダル・ヒロイン

「お前友達でも誘えば?せっかく貸し切りだし。でも男は駄目だ。あのしおりつー女も好かんから嫌」

「誘うような男友達もいないって。あーでも親友の子誘おうッと。昴さんの事も真央の事も会いたいって言ってたから喜ぶと思うよ」

「げー、俺そういうミーハーな女嫌い」

「くれぐれも私の友達に失礼な態度を取らないように」

「うるせ」

夏の終わりの夕暮れは何故か切ない。
こんな当たり前に過ごしている毎日さえいつか思い出になってしまう。

あんな事もあったなぁと懐かしく思うようになって、真央もそのうちあんな奴いたなぁー程度に私を思い出す日はあるのだろうか?

ふたりで庭に座って、スイカを食べて夕涼みをしているなんて私からしてみればありえない時間だった。

けど、真央にとっては何気ない、いつか通り過ぎていく時間のひとつに過ぎない。

「そういやー…お前9月ちょっとで帰るって」

「あー…大学が始まるからねぇ」

「大学なんて辞めちゃえばいいのに」

「あんた…人の一生を決める大切な事をよくも簡単に’辞めちゃえばいいのに’なんて軽く言えるわね。
こっわー…」

「フンッ。大学を卒業して就職をして安月給で働かされるのが可哀想だって同情してやってんだよ」

「それが殆どの人間にとって普通なのよぉー……」

「お前グリュッグエンターテイメントに就職しちゃえばよくない?!」

笑顔でとんでもない事を言い出す。どうしてこうも突拍子のない事を言い出せるのだろう。
< 281 / 347 >

この作品をシェア

pagetop