【完】スキャンダル・ヒロイン

「姫岡さんさっきはごめんなさい」

頭を下げて素直に謝ると、彼は意外そうに眼を丸めた。

「スニーカーやジーンズを汚してしまって、ごめんなさい。
それにエプロンありがとうございました……」

そこまで言うと、口を歪ませて変な顔をする。しかしコロコロと表情の変わる人だ。
ツンと上に顔を向けて少しだけ頬を赤めたのを見逃さなかった。

「フンッ。別にそのエプロンは物置に置き去りにされていた誰かのゴミだ。
お前がエプロン忘れたとかギャーギャー騒いでうるさいから持ってってやっただけだ。勘違いするなよ?」

「え~?真央さっき出かけてっつーのはわざわざエプロン買いにいってあげてたの~?」

私達の話を聞いていたのか、テレビを見ていた山之内さんがこちらに顔を向ける。
その発言を聞いて、姫岡さんは顔を真っ赤にさせる。そして目線を逸らす。

「た、高かったんだからな!スニーカーは限定物だし、ジーパンもビンテージでかなりの値段がする奴だった!お前の持ってるような安もんとは違うんだぞ?!
それを勝手にキレてバケツの水をかけやがって…!
ま…まぁ謝ったようだから弁償は勘弁してやるッ!
どうせお前なんて貧乏人なんだろうからな!」

「チッ…」

「あぁ?!なんだぁ?!何舌打ちしてんだよ!」

「はいはい。私が悪かったですよ。これからお皿拭くんだから邪魔しないで下さいね~…」

「お前ブスなだけじゃなくて随分生意気だな!」

「はいは~い。私はブスで生意気ですよーだ」
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