この恋シークレット   ~アイドルと運命の出逢いをしました~
「俺の両親は共働きで、一人っ子の俺は学校から帰ったら母親が帰って来るまでひとりで留守番だったんだ。いつも、19時過ぎに帰るから、それまでは宿題をした後テレビを見たりする事が多くて」

「俺もそうだったわ。俺は弟がいたからふたりだったけど」と亮。

「でも、夕方は別に見たい番組があると言うより、音がないと寂しいからつけてるって感じだったんだけど、いつも無意識に同じ番組をつけてたんだ。ある日、夕方テレビを見てたら突然大きな揺れが来て、地震だって分かってるんだけど、当時小学生だったし動揺しまくり。そんな時、テレビの中から凄く冷静な声が聞こえてきて、見るとスタジオも揺れているのに、カメラに向かって今するべき事を小学生の俺でもわかるくらい簡単にゆっくりと伝えているアナウンサーがいたんだ。外に出たらいいのか、机の下に入るのか考えすぎて動けない俺は、その声を聞いて安心と落ち着きを取り戻した」

「ヘェ~何か凄いな」と晴。

「だろ!原稿があるわけでもリハーサルしてたわけでもないのに咄嗟に判断して伝えるって凄いよなぁ。それからは、そのアナウンサーが憧れで。特に自分が芸能活動を初めて、あの時の対応がどれだけ凄いかを実感した。台本がキッチリあっても緊張するし、生放送なんて毎回緊張感が半端ないしな」

「分かるわ。リハーサルしてても、生放送は毎回緊張する」と廉。




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