この恋シークレット   ~アイドルと運命の出逢いをしました~
葵は、出来るだけ周りを見ず歩みを進める。
普通なら芸能事務所なんて、一生来る機会のない場所だ。

言われた通りエレベーターに乗り込み、5階のボタンを押す。他に乗る人がおらず、ひとりだった事に安心する。今でも、密室での男性との二人きりのシチュエーションは避けている。

途中で止まる事なく到着したエレベーター。
降りると、2カ月前に助手席に座っていた原田が立っていた。一度会っただけだが、原田だと分かった。

「結城さん、本日はお越しいただきありがとうございます。そして、事故の際には助けていただき、その後も対応していただき、本当にありがとうございました」と頭を下げる。

「原田さん、頭を上げて下さい。もう、お電話でもお礼を言っていただいて、充分伝わっております。たまたま居合わせてお役に立てただけですから」葵は、いつも控えめだ。

原田は、芸能界に身を置き、自意識過剰だったり傲慢な態度の女性を沢山見てきた。それ位の女性でないと芸能界を生き抜くことが難しいのも事実だ。だが、葵を見ていると、凄く癒される気がする。話し方も聡明で好感がもてる。蒼もきっと、何か感じたのだろう。












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