腹黒王子に逆らうな!

女の子が去った後に、梅永君はすぐ横のベンチに腰掛(こしか)けると、(あし)を組んでスマホを取り出した。

「チッ、何がデートだよ。仕事で初めて会ったばっかのくせに」

えっ。

ええ!?

「この仕事も終わったし、スタ(ばく)うざいから連絡(れんらく)先消しとくか……」

(さわ)やか笑顔の似合う好青年とは思えないほどの無表情、舌打ち、そして低い声。

テレビでは常に笑顔を振りまく王子様の本性が、まさかこんなに口悪いとは……。

まぁ芸能界ってギスギスしてるらしいし、色々ストレス溜まるんだろうな。

「見なかったことにしよ……」

見られたのが私で感謝しなよ、記者とかだったら記事にされてるんだからね!?

なんて寛大(かんだい)な自分に()いながら立ち去ろうとすると。

「ゑ、あ!? ゔぁぁぁ!?」

突然(とつぜん)視界が一転したかと思うと、腰に激しい痛みが走った。

同時にカランカランと軽い金属音が響く。

「いったたぁ……空きカンくらいゴミ箱に捨てろや! ったく……」

サイダーの空きカンをひっ(つか)むと、床に座り込んだままゴミ箱へ投げ入れる。
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