腹黒王子に逆らうな!
「君……」
「……あっ」
ジンジャーエールの缶を持った梅永君と、目が合った。
「……今の、見てた?」
「今の……って?」
女の子ならドキッとしちゃうような微笑みも、さっきの本性を見た私にとっては恐ろしい仮面でしかない。
とぼけたフリをしてみたけど、梅永君は眉一つ動かさずに微笑んだままだ。
「いっ、いやぁ〜今来たばっかりで! ほ、本物の梅永さんですか!? 会えて嬉しいなぁ〜! サインください!」
脂汗を滲ませながら、恐る恐る立ち上がった。
気まずい沈黙が流れて──。
「……演技ヘタクソ」
低い声だけが廊下に響いた。