腹黒王子に逆らうな!
「パニック・ぱんでみっく……ってあの、性別が無くなるウイルスの話……?」
一巻読み切りの短編だけど、映画一本分にはなるくらいの文量を求められてかなり苦労したやつだ。
今日発売で、さっき柳さんから貰った献本はこの作品。
「お前も詩島茎尾のファン?」
「ファンっていうか……まぁ名前は知ってるーみたいな……」
知ってふもなにも本人なんですけどね!
──なんて言えるはずもなく。
「3ヶ月ぶりの新作で楽しみにしてたってのに……」
梅永君は悔しそうに唇をゆがめた。
「そんなに好きなの? その作家さん」
正体隠しながらこんなこと訊く私って、意地悪いなってつくづく思う。
だってあの人気俳優がだよ!?
私の作品なんかが好きって、笑っちゃうしドキドキする。