腹黒王子に逆らうな!
周りに誰もいないと、つい素が出てしまう。

「この仕事も終わったし、スタ(ばく)うざいから連絡(れんらく)先消しとくか……」

LINEアプリを開いて、さっきの女のアカウントを探して消していると──。


「ゑ、あ!? ゔぁぁぁ!?」

突然甲高い悲鳴がして後ろを見ると、灰色のブレザーに青のパーカーを着た女がすっ転んでいた。

もう何ヶ月も行っていない、俺の学校と同じ制服。

赤いネクタイが揺れた。

「いったたぁ……空きカンくらいゴミ箱に捨てろや! ったく……」

まぁまぁ整った顔立ちとスタイルからして、雑誌の撮影に来たモデルってところか。


話を聞けばどうやらこの女、やっぱり学校に無許可でモデルのバイトをしているらしい。

俺が言えば、彼女は一発で退学か停学になるだろう。

別にこんなことを告げ口してこの女の恨みを買いたいわけでもないし、言うつもりは無いが。


「……別にお前のことなんかどうでもいいから言わねぇよ。俺のことはSNSで愚痴(ぐち)るなりすれば? バズるかもよ」

どうせ一人がSNSで言ったところで証拠も無いから信じられないだろうし、バレたらバレたでこの業界をやめるつもりでいた。

仮面が()がれた時が、俺の俳優人生の終わりだ。

そう覚悟してたら。
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