腹黒王子に逆らうな!
──授業中。
「そしてボストン茶怪事件の後にイギリス議会は……おいそこ、話聞け〜」
梅永君が登校してきたことにより、クラスの風紀は乱れた。
特に女の子は落ち着きなく梅永君に視線を向けている。
私も混乱と緊張で授業内容全然入ってこないよ〜。
ふと梅永君の方を見ると、頬杖をつきながら気だるげに黒板をながめていた。
一応教科書は開いているけどノートはとっていない。
それにしても、改めて見るとかっこいい顔してるなぁ。
鼻高いし、まつ毛なんて割り箸が乗りそうなくらい長いし──。
「……何?」
私の視線に気づいた梅永君が、少し不機嫌そうな声で囁いた。
「えっ、あ、別に……授業大丈夫かなって……」
慌てて適当にそう言うと、梅永君は眉根を寄せて険しい顔をした。
「……正直、全然分からん」
梅永君の教科書を見ると、いつの間にかリンカーンの顔に鼻毛が落書きがしてあった。
もしかして梅永君────私よりバカ?