腹黒王子に逆らうな!
──放課後。


次の小説に使えそうな資料を探すために、旧校舎の図書室に来ていた。

基本貸し出しはできないけど、コピー機が設置されているから読みたいページをコピーして持ち帰ることが出来る。

こんなに便利なのに、旧校舎っていうのもあってか人はいない。


「あー、この本使えそ〜!」

中世ヨーロッパのファッションの歴史。

今度はこんな感じのヨーロッパ貴族社会を舞台にしてもいいかもな〜。

なんて呑気に気に入ったページのコピーを取っていると。



「……おい」

背後から低い声がした。

「え、あ! 梅永君!?」

振り返ると、息を切らした梅永君がのろのろと入ってきた。

大勢(おおぜい)の女子に追いかけ回されてたんだろうなーって聞かなくても分かる。

「やっと……二人きりになれた……」

「えっ」

ドラマにでもありそうな台詞に、思わず心臓がはねた。

けどすぐに、約束の感想言いに来たんだなって冷静になる。
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