腹黒王子に逆らうな!
図書室を出ると、ポケットの中のスマホ小刻みにが震えた。

ディスプレイに表示されているのは、柳さんの番号。

「もしもし、柳さん?」

「あぁ詩島さん、今大丈夫? 実写化のことなんだけど……」

「はい、大丈夫です!」

そうだ、梅永君のことでバタバタしてたけど、私の作品実写化するんだった!

これから忙しくなるな〜。

「さっき役のオーディション結果が決まってね。なんと! 主人公オーギュスト役は武久蓮(たけひされん)君、相棒(あいぼう)レイズモンド役に梅永亜瑠君を起用することにしました〜」

「う……梅永亜瑠ぅ!?」

柳さんの弾んだ声とは対照的に、間抜けな叫び声をあげてしまった。

普通だったら、子役の頃から活躍してる超絶人気イケメン俳優の武久蓮(たけひされん)に反応がいきがちだけど、それよりも私は梅永君に反応してしまう。

「急だけど、明後日18時に顔合わせするから。今後も原作者には何度か来てもらうからね」

「私も行かなきゃいけないんですか!?」

「放課後とか時間取れる時で構わないけど、なるべくね」

時間の問題はこの際どうでもよかった。

どうしよう、顔合わせなんてしたら確実に──梅永君にバレる!!
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