腹黒王子に逆らうな!
軽い足取りで談話室を後にする。
未だに夢なんじゃないかって信じられないくらいだけど。
「喉乾いちゃった……ジュースジュース……」
そういえば、出されたお茶にも手を付けず何も飲んでなかったことを思い出した。
人気(ひとけ)の無いトイレの近くの自販機へ向かうと、そこには──。
「梅永君、この後撮影?」
「いや、インタビューだけだよ。彩花ちゃんは?」
「さっき撮影終わったとこ!」
うわぁ本物の梅永亜瑠と──知らない女の人だ。
めっちゃ可愛いし、多分撮影に来たモデルの人かな?
まつ毛長くて、髪の毛もツヤツヤで、パステルカラーのワンピースが良く似合う。
「もし良かったらこの後……デートしない?」
お、女の子にデートに誘われてる!
これがデートに誘う場面か、小説に使えるかも!?
とっさに壁に隠れて様子を伺う。
「んー……ごめん! まだ覚えてない台本あるから。このオーディションだけは絶対通したくて。ごめんね」
「そっかぁ真面目だね……インタビュー頑張ってね」
爽やかな笑顔だけど容赦ないな……。
あんなに可愛い子でもデート断られちゃうんだ。
もう私、恋愛なんかできない気がしてきたよ……。