愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
茉莉ちゃんはどこまでも優しくって泣いている彼氏くんの頭をなでて慰めていた。
思い返してみると、彼氏くんはここにきて一度も顔を上げずに茉莉ちゃんにすがるように肩に顔をうずめていた。その光景が少し笑えた。

「もうっ、まるで母親にすがりつく子供じゃない。みっともないからもう顔を上げなさいよ。」

そういうと、意外にもすんなりと彼氏くんは顔を上げて茉莉ちゃんの顔を覗きこんでいた。
なんか修羅場というより、ほほえましい光景で思わず私の顔もほころんでいた。
と、何となく私たちの様子が落ち着いたと思ったのだろう、店員さんが注文を聞きに来た。
もう入店してだいぶ時間がたつのに何も注文していなかったから。

「私、やっぱりいつものチーズハンバーグにする。茉莉ちゃんもハンバーグでいいよね?」

もうこれでこの話は終わりだろうと思って気分を切り替え注文を決める。
グリルチキンはまた今度でいいかなぁ。楽しいときに取っておこう。
相変わらず昌くんは迷うことなく注文を決めていた。って勝手に観察して知っているだけなんだけど。
結局彼氏くんも昌くんと同じものを頼んでおり、茉莉ちゃんも彼氏くんの勧めでハンバーグを頼んでいた。
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