愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
「お前可愛くないよ。」

そう言って私の手を取ると私の家に歩き始めた。
私もその手に引っ張られるように歩いた。

「可愛くなくて結構よ。そんな女と手を繋いで歩くのは時間の無駄でしょ?早く帰りなさいよ。」

半ば叫ぶように昌くんの背中に言うけど、振り返りも返事もしなくて私を引っ張て歩いた。
何よ。まぁ、最後だしいいか。きっと明日からはコンビニ店員と客で、4月からはすれ違うかもしれないだけの他人。
考えると胸が苦しくなって思わずぎゅって昌くんの手を握り返してしまった。

「フンッ、お前も可愛くできるじゃん。」

ってボソッと言われた。
手を握り返しただけなのに。妙にうれしくて俯いて歩きながら顔がにやけてしまった。
でも私の家って本当に近くって歩くのが速い昌くんに引っ張られてたからすぐに着いてしまった。

「フフッ、おかしい。なんなんだろうね。はぁ~ドキドキした。久しく彼氏なんていないんだから、手なんか握らないでよ。」

そう言って手を離すとズボンで手汗を拭いた。
そんな私を見て昌くんは笑って頭をくしゃくしゃってなでた。

「なぁ、2回も送ってやったんだからお茶ぐらい出せよ。」

「今日は勝手に送ったくせに。」

そう言ってマンションに歩いていくと後ろをついてきた。
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