愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
「たぶん言っちゃうともううちには来てくれない気がする。着信も拒否されそうだし。」

と思っていたことを言うと、その言葉はそのまま自分の心に刺さる。

「そんな不誠実な!由実ちゃんはそんな男で…」

うん、そんな男だけど好きなの…
私が泣いていたから茉莉ちゃんは困った顔になる。

「ごめん、昌くんのこと悪く言うつもりはなかったんだけど…でもそんなのっておかしいよ…」

「うん、わかってる。初めはそれでも抱いてもらえるなら記念に1回くらいってノリだったんだけど…でも忘れられなくなっちゃった。それにね、ふらっとうちに来て追い返すときっと他のだれかの所に行っちゃうでしょ?それが嫌で受け入れちゃうの。馬鹿だよね…前の彼氏のことやっと吹っ切れたばっかりだったのに。見る目ないなぁ。」

今まで誰にも言わなかったし、言葉にすると現実として受け入れないといけないから心の奥にしまっておいた気持ちをついに言ってしまった。
もう無理だった。涙どころか嗚咽まで漏れる。
そんな私をずっと優しく抱きしめてくれていたから、ひとしきり泣くと、茉莉ちゃんの温もりに包まれてて次第に落ちついてきた。

「はぁ~我ながらバカなことしてるなぁ。」

ため息をつく。私は茉莉ちゃんから離れると、薄々考えていたこと話した。

「私さ、春から就職決まってて税理士事務所の事務なんだけどここから通うのって少し遠くて…朝の満員バスなんて乗りたくないしお給料貯めたら引っ越すつもりなの。」
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