愛というものより～由実ちゃんと昌くん～
「えっ？どうして？何？」

「お前、今日バレンタインだよな？普通は彼氏と過ごすもんじゃないのかよ？」

昌くんはすごく怒っていた。怖すぎて思わず優の背中に隠れてしまった。
え？今なんて言った？彼氏？
優の背中で頭にはハテナマークが飛び交った。

「由実の知り合い？」

優は私をかばうように立ったまま私に聞いた。

「うん、友達の彼氏の友達かな。」

私は声に出してみてその位置関係に胸が痛くなる。

「ふざけるなよ。友達じゃねーだろ。やることやっといて。」

「友達じゃなかったらなんなのよ？あぁ、言葉が足らなかった？そういうことする友達、え～と、なんて言ったっけ？」

怒りや胸の痛みや惨めさがいっきに襲ってきて頭はパニックになる。

「彼氏だろ？お前が先に言い出したことだろ？」

「私付き合ってなんてないし、何も言った覚えない。」

「お前が、由実が、自分とも付き合えるかって言ったんだろ？自分でいいだろって。」

「それは気軽に出来る相手の話で…え？」

もう頭がついて行かずに更にパニックになった。
私と昌くんに挟まれて言い合いを見ていた優が私の背中を撫で始めた。

「由実、落ち着いて。きっと話が食い違ってるよ？カッとしたままだと話は平行線だ。」

私は頭の中がパニックのまま優の顔を見上げた。
昌くんはそれを見て怖い顔のままズカズカと近寄ってきて私の背中を撫でる優の手を払いのけた。
< 68 / 80 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop