愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
「気安く触るな。」

そう言って私の腕を引き、今度は昌くんが私と優の間に立ちはだかる。

「落ち着いて話したほうがいい。この人大丈夫な人だよね?」

優は私に聞いてくるから私は頷いた。

「じゃあ、立ち入った話になりそうだから俺は行くよ。会えて良かった。」

軽く手を挙げると一人駅のほうへと歩いて行った。
私は慌てて優の背中に向かって「ありがとう。」って叫んだ。

「おい、何だよアイツ。」

「元カレ。一年半付き合って振られて、一年引きずった人。」

「なんでそんなヤツと一緒に仲良く歩いてんだよ!」

「同じ飲み会に参加してて、帰るから家まで送ってくれようとしたの。」

昌くんの表情はさっきほど怒っていないように見えた。

「そして、また家に上げるのか?俺みたいに。」

「上げないし…昌くんは特別だったのよ。一年引きずってたのにいつの間にか昌くんを見てる自分がいて…好きだったから…」

そう言うと、涙が流れた。
言ってしまった。連絡を無視してた時点で終わってたけど、気持ち伝えてしまったらもう本当に終わりだ。
そう思ってたのに、昌くんは私の腕を引っぱって、私を抱きしめた。

「俺のこと好きなら他の男といないで俺といろよ。電話もメールも無視しやがって。」

言葉は怒ってるけど、昌くんの声色はすごく優しかった。
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