愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
「なによそれ、好きだなんて一回も言われたことない。」

「由実だって言わなかっただろ?」

「言ったらもう関係を切られると思ったから。」

「俺は言わなくてもわかってると思ってた。悪かった。」

そう言ってまた私を抱きしめる。

「まさかな、そうくるとは思わなかったよ。お前の表情が暗くなっていってたのは俺に嫌気がさしたからだと思ってた。」

「良かった。都合のいい女じゃなくて良かった。ふぇぇ…」

私は昌くんの胸の中で声を上げて泣いた。
昌くんは私の背中をポンポンと叩いてくれていた。

「あっ、ちょっと大吾に電話させて。心配してるだろうから。」

そういうと片手で私を抱きしめたまま電話をかけ始めた。

「見つけた。悪かったな、バレンタインに。……あぁ、たぶん大丈夫。ありがと。……ん?わかった。」

話の途中で体を離されると、「茉莉ちゃんから」って携帯を渡される。

「もしもし?」

『由実ちゃんごめんね、騙すみたいなことして。どうしても由実ちゃんのいる場所が知りたくて…。無事に昌くんと会えたみたいでよかった。大吾と話してて二人は同じ気持ちなのにすれ違ってそうだったからおせっかい焼いちゃった。』

「あのメール?フフッ、おかしいなって思った。大丈夫。バレンタインなのにありがとう。また今度泊まりにきてね。話を沢山したい。」

そういうと電話を切った。
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