愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
そんなこと…私って女らしくないし、うるさいし…
グルグル今までのことを思い出して涙が流れる。

「俺、兄弟いなくて一人っ子なんだ。だから人と何かを分け合うとか、誰かの食べかけを食べるとかしたことねーんだ。だから自分でもあの時自分の行動に驚いた。意味わかんねーし、お前のことばっか思い出した。」

そう言いながら私の涙を指で拭った。

「初めは大吾がうらやましかった。あいつの方が女に対してはひどかったんだ。だから最初茉莉ちゃんにちょっかい出しだしたときはあの子はダメだろって何回も言ってたくらいだ。でもあいつ突っ走っていくし、まさか茉莉ちゃんにどっぷりハマるし。俺もそんな女がいたらどうなるんだろうってな。」

「フハッ、大吾くんの茉莉ちゃんへのハマりようはすごいもんね。でも茉莉ちゃんだったからできっと似たような女の子じゃダメだったと思う。あの子すごいもの。私ならきっと耐えられないもの。もっとひねくれて生きてると思う。」

「そしたら俺がそこから引っ張りあげてやるよ。ほら、降りるぞ。」

家の近くの駅について電車が減速しだした。
昌くんは先に立って私を引っ張り立たせてくれた。
電車から降りるとやっぱり外はひんやりと寒かった。
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