愛というものより~由実ちゃんと昌くん~
駅の改札を通ると昌くんは私の家へと先に歩き出した。
私はその背中を追いかけるように小走りでついて行った。

「さっき優にも言われたけど、私って強いのよ。ビールの缶だって自分で簡単に開けられるし、電車の中で立ち上がることだってできる。重たい荷物だってある程度平気だし、夜の道だって何度も一人で帰ってるもの。」

「だから?」

昌くんは振り返って私の目をまっすぐ見た。

「守ってあげないといけないようなか弱い女じゃない。声も大きいし、良く食べるし、よくしゃべるし、おせっかいだし、すぐ怒るし…」

「すぐ泣くし?」

そう言って私の目の前にきた昌くんの顔をみあげると目から涙が流れる。

「可愛いよ。全部。俺はキスも好きじゃないけどお前とはしたいと思う。」

「そんな…私はそんな茉莉ちゃんみたいにいい女じゃない。遊び人の昌くんから夢中になってもらえる自信もない。」

「それ嫌み?それは俺が決めることだろ。大吾みたいにってのは無理かもな。あれは恥ずかしい。でも俺は俺のやり方でお前を大切にする。うれしいだろ?」

「ハハッ、自分で言ってる。…うれしい。」

今度は私の手を取ってまた指を絡めて繋ぐと私のペースに合わせて歩いてくれた。
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