もう二度ときみに恋はしない

*

「来年も俺が一番に会って一番にお祝いするからね」

「……ありがと」

「え、泣くほど? 俺のことそんなに好きなの?」


 ちがうよ、ちがくないけど、そこじゃなくて。

 未来のはなしとか、そういうのも全部全部

 なんだか救われたような気がしただけで。


『誕生日おめでとう』


 出会って17回目の誕生日。

 私たちはもうあの夏の日も、あの夜にも帰らない。

 好きだったかもしれないと疑うこともない。


『誕生日おめでとう。俺来年彼女と籍入れるかも』


「ねえ、りっちゃん。結婚しよう?」

「……はい、します」

「へへ、指輪買いにいかなきゃねー」


 家に遊びに行くことなんかない。

 かき氷機を買いに行くことも、夏の公園に行くことも

 一人暮らしの部屋にもいかないし、気づかなかったと驚くこともない。

 私は、私たちは、もう二度と、同じ世界で恋をすることはないだろう。


*
< 36 / 37 >

この作品をシェア

pagetop