完璧な彼が初恋の彼女を手に入れる5つの条件
桜衣としては、母の散々な恋愛遍歴を間近で見て育ったため、恋愛や結婚はなんだか『しんどそうだな』と感じていた。年頃なのに女の子らしい夢を見れなくなっていたのだ。
「なんか、めんどくさそうだなーって」
「……絶対、結婚しないのか?」
やけに真剣な顔で詰め寄られる。軽い気持ちで言ったのに、急にどうしたんだろう。
「え、ま、まぁよっぽどいい人がいたら考えても良いけど……」
勢いに押されて答える。
「どういう相手ならいいわけ?」
「なに、結城は芸能レポーターかなんかですか?」
「いいから、具体的に教えろよ」
……圧がすごい。
何か言わないといけないと感じた桜衣は
『結婚相手に求める条件』語らされるという謎の罰ゲームを受ける事になった。
今思えば……あれは、なんだったんだろうな。
中学生にして枯れた発言をする桜衣をおかしと思い、心配して言ってきたのだろうか。
――それに、あの時も……
思い出が何とも言えない胸のざわめきを呼び覚ますところまで来て、ハッと我に返る。
いつの間にか手に持っていたビールの缶は空になっていた。
――もう、13年以上たつ事なのにね。
彼は医者になったのだろうか。優秀だったし、いずれにしろ成功した人生を歩んでいるに違いない。
きっと結婚をして幸せになっていることだろう。
「……寝るか。明日は朝一から打ち合わせだったもんね」
暫く思い出を懐かしんだ後、桜衣は片付けに立ち上がった。