完璧な彼が初恋の彼女を手に入れる5つの条件
イケメン支持率
桜衣(さえ)ちゃん、今日こそ付き合って欲しいな」

 オフィスビルのエントランスで男が誘う。

「松浦さん、申し訳無いのですが、今日は仕事が立て込んでおりまして」

 答える彼女の声は丁寧だが淡々としている。

「じゃあ、時間出来たら、ここに連絡して、待ってるから」
 強引にメモを手渡される。見ると、個人的な連絡先が書かれている。
 慌てて返そうとするが相手は受け取らず「じゃあね」と足早に立ち去っていく。

 その姿を見送りながら、はぁ、と溜息を付く。

 倉橋桜衣(くらはしさえ) 28歳。このビルに本社を構える総合事務機器メーカー、株式会社INOSEの社員で、入社6年目になる。

 INOSEは文房具から事務機器、家具まで幅広く事業を展開しており、桜衣はファーニチャー部門の国内法人営業部に所属している。

 法人営業部は主に企業オフィス関して事務機器の斡旋や、オフィス環境そのもののプロデュースまで、様々な事を行っている。
 
 桜衣はオフィスデザインの提案やなどの営業業務を担当している。入社当初はサポート業務ばかりだったが、2年前位から自ら客先に提案を行ったり営業活動する機会が増えている。
 まだ経験は少ないが、徐々にお客様の信頼を得られてきている……はずだ。

 今日も顧客先である大手会計事務所の跡取り息子から、事務所の什器の入れ替えの相談があると言う事で、打ち合わせの場を持ったのだが……

「あのお坊ちゃん、やっぱり桜衣さんをデートに誘いたくて打ち合わせ入れたんですねぇ」

 ちょうど出先からの帰りだったのか、近づいてきた同僚が声を掛けて来た。

「未来ちゃん、聞いてたの?」
 
 彼女は園田未来(そのだみく)という入社2年目の後輩社員で、つい最近まで桜衣が事務作業の指導係だった。
 同じく法人営業部に所属し、主に営業事務を担当している。
 とても可愛らしく清楚なお嬢様といった雰囲気なのだが、実はしっかり者の彼女を桜衣は妹のようにかわいがっている。

 ふたりは連れ立って自社のオフィスエリアに向かう。

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