完璧な彼が初恋の彼女を手に入れる5つの条件
大き目のおにぎりを4つ持ってきたのだか3つは瞬く間に彼が平らげてしまった。
桜衣は1つでお腹がいっぱいだ。
「はーうまかった!ご馳走さま」
ペットボトルのお茶を飲みながら陽真は満足気だ。
桜衣もホッと一息ついて、遠くの景色を眺める。こんなに心地いい風を感じるのは随分と久しぶりだ。
「そういえば、結城、見せたいものってこの景色だったの?」
そもそも『見せたいものがあるから』と言われて誘われていたはずだ。
「結果的には自然も風景も見せてあげられて良かったけど、本来の目的はコレ」
陽真は黒いリュックからクリアファイルに挟まった書類を取り出す。
「コレ?」
陽真に渡された書類を開く。
カラーでプリントされたそれは細かい項目に分かれ表のようになっていて、様々な数値が並んでいる。
これって――
「人間ドック……の結果?」
「そう。この前受けて来たけど、どこにも異常なし、ばっちり健康でした」
「うん。それは良かったわ。で、私はこの自然あふれる山頂で何を見せられているのかしら?」
「――『健康である事』」
「……それが3つ目?」
――あぁ、そうか。
「そう。今日の目的としては、俺は健康である事をアピールしたかった。足腰もしっかりしてただろ?ま、このくらいの山じゃ実証できなかったかも知れないけど、体力のある所も見せたかったし、ちゃんと健康だっていうデータも見せたかった」
「はぁ、そうなの」
「で、3つ目もクリアで良い?」
期待に満ちた顔で見つめてくる。桜衣は書類を陽真に押し返しながら言う。
「そうね。わかったからこんな個人情報の塊早くしまって」
「もっとちゃんと見なくても?」
「いいから」
気が済んだのか、陽真は満足気に笑い書類をリュックに戻す。
5つの条件のうち、すでに3つクリアされてしまった。
この調子だとあと2つも軽いのでは無いか……あと2つ、一体何なんだろう。
「しかし、今までの条件って本当に現実的だよな。桜衣らしいと言うか。中学生の女の子だったら、優しいとか、イケメンとか、背が高くなきゃ、とか言いそうじゃないか?」
(それ、あんた全部楽々クリアしてる思うわよ)
そう思ったが、桜衣は違う事を口にした。
「……私の父、病気で亡くなってるの」