山神あやかし保育園〜天狗様の溺愛からは逃げられません!〜
「あやかしたちが、どうやって"ぞぞぞ"を稼ぐのかまでは私は関知しないよ。さらに言えば仕事をしてなくても構わない。それで"ぞぞぞ"を食べられなくて消えてしまったとしても、それはそれで構わないのさ」
 こともなげに紅は言う。でもそれではあまりにもかの子がかわいそうだとのぞみは思った。
 保育園でのかの子は、徐々に他の子に馴染みつつある。のぞみがいなくても園庭で他の子と一緒になって走り回る姿も見られるようになってきた。それでもお迎えの時間が近づくと側へ来て小さな手でのぞみの手をぎゅっと握る。自分のお迎えは一番最後だとわかっていても、玄関の方にじっと目を凝らす姿がのぞみの胸を刺した。
「人間の保育園では、子を預けた親が何をしているかまで気にするの?」
 紅に聞かれてのぞみは黙り込んでしまう。
 人間の保育園は保育が必要な子どもしか入れないというルールがあるから、仕事をしていない日は預けないで下さいということもできるだろう。でもここは、あやかしの保育園なのだ。さらに言えば紅のボランティアみたいなもので…。
 その紅が"仕事でなくても構わない"というならば、そうなのだろう。
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