山神あやかし保育園〜天狗様の溺愛からは逃げられません!〜
「のぞみ、ダメだ…、ダメだよ!危険すぎる。紅さまは来るなと言ったんだろう?!」
「それでも他に方法はないわ。こづえさんお願い、私の"ぞぞぞ"を切り離して」
 のぞみの言葉にこづえは目を見開いたまま、口をパクパクさせている。
 颯太が掠れた声を出した。
「のぞみ…」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんへの恨み言は帰ったらたっぷり言わせてもらいますから。それまではしっかり志津さんを守っていて。でないと絶対に許さないんだから!」
 あやかし達からおぉ!という声が上がる。お嫁さま、許婚さまと皆が口々に唱えている。のぞみは彼らに微笑みかけた。
「安心して下さい。紅さまは必ずここを…あやかし園を守って下さいます。それまで、子ども達をお願いします」
 それからサケ子の周りに集まっている子どもたちに向き直った。
「みんな、お願いがあるんだけど」
 子ども達は目をパチクリとさせてのぞみの方を不思議そうに見た。
「こんなに沢山のお父さんお母さんが、保育園に集まっていることなんて滅多にないよ、嬉しいね。せっかくだから、みんなが保育園で練習していたあれを見てもらうことにしない?ほら、あれ…サケ子先生のぞぞぞ講座!」
 子ども達の目が輝いた。
「やる!やりたい!」
「オイラ上手にできるようになった!」
「私も!」
 のぞみはにっこりと頷いた。
「じゃあ先生が、驚かされる役をやるからね。せいのでいくよ」
 チラリと振り返るとこづえはまだ納得のいかない表情で、それでも普段"ぞぞぞ"を持ち帰るときに使う大きな白い袋を手にしている。
 のぞみはよしと頷いて、子ども達に合図を出した。
「いくよ、せーの!」
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