山神あやかし保育園〜天狗様の溺愛からは逃げられません!〜
 膝にある温もりと、背中に感じるずっしりとした重み。あやかしだろうとなんだろうと子を預かる責任は同じだろう。
 のぞみの言葉に紅は嬉しそうに頷いて、「大丈夫、大丈夫」と微笑んだ。
「のぞみにしかできないよ。あやかしの子どもは意外と好き嫌いが激しくてね。こんな風になつくのはすごく珍しいことなんだ。だからもうそれだけで、のぞみはあやかし園の先生にぴったりなんだ」
「でも…」
 なおも言葉を続けようとするのぞみだが、背中のかの子が泣き出して言葉を切った。
「のぞ先生…」
 それを見て、「頼むよ」と紅が言った。
「かの子は、特に難しくてさ。座敷童子の子どもだから、気まぐれに見えたり見えなかったりするんだよ。それで見えないとき今日みたいに母親を追って外に出られたりしたら困るだろう? のぞみみたいに初めから見える子なんてそうそういないんだ」
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