山神あやかし保育園〜天狗様の溺愛からは逃げられません!〜
 まだ出会って間もないあやかしの言葉だけれど、なんとなく信用できるような気がしてのぞみはホッと息を吐いた。
「それからこれは確認ですけど、お給料はちゃんと人間のお金でもらえるんですよね? その…あやかしのお金ではなく…」
 昔絵本で見た狸は、人を化かして葉っぱで買い物をしていた。それでは困るし、生活できない。
 のぞみの問いかけに、紅はくすくすと笑って、「大丈夫」と請け負った。
「なんなら銀行振込でもいいよ」
 え?あやかしが?と心の中で驚きながらものぞみは胸を撫で下ろした。
「それはどちらでも大丈夫です。条件というか確認は以上です。よろしくおねが…」
「決まりだ!!」
「ぎゃ!」
 突然ガバッと抱きしめられて、のぞみは思わず色気のない声をあげてしまう。紅の浴衣の合わせからちらりと胸元がはだけて見えて、直視できなかった。
 油断するとすぐこれだ。
 のぞみは力いっぱい両手で紅を押して、大きな声で宣言した。
「あたりまえですけど、セクハラもダメですからね!!」
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