山神あやかし保育園〜天狗様の溺愛からは逃げられません!〜
 紅は何人もの子どもたちに乗っかられながらも大して重そうにもせずに一人一人の頭を撫でてやっている。まるでお父さんが仕事から帰って来たみたいだと苦笑しながら部屋を見回したのぞみは、かの子が部屋の隅で膝を抱えていることに気がついた。うつむいて、寂しそうにしている。
「こういう時、かの子ちゃんは行かないんですね」
 のぞみはサケ子にこっそり言った。開園前はあんなに嬉しそうに紅に抱かれていたのに。
「かの子は、園に通いだしてまだ日が浅いからね。他の子どもに交じるのが嫌なのさ。大抵は、母親がくるまでああやってじっとしてるよ」
 のぞみはサケ子の言葉に驚いて、かの子をじっと見つめた。なるほど、まだ園に来て間もないなら母親が恋しくてさまよい出るのも頷ける。しかもずっとあぁしてるなら、母親が迎えに来るまで尚更長く感じるだろう。
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