かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
「何、って……あの、怒ってないんですか?」
「怒る? どうして」
「だっ、だって、私ずっと……っ奥宮さんのことを、騙してて」


後ろめたさから、しどろもどろ話す。

するとそれを聞いた奥宮さんが、あっさりととんでもない発言をした。


「気づいてたからね。きみが双子の妹の立花くれはじゃなくて、姉の立花ことはだっていうのは」
「……えぇっ??!!」


驚きすぎて、つい大きな声が出てしまった。

気づいてた? 私が(くれは)じゃなくて、(ことは)の方だって……?


「な、なんで……」


呆然とつぶやく私に、奥宮さんはイタズラっぽい笑みを浮かべて答える。


「最初に言っただろ、少し調べさせてもらったって。見合い相手として名前が挙がったのはくれはさんだったけど……“立花専務の娘さん”として、天真爛漫で社交的な妹の情報だけじゃなく、聡明で控えめな双子の姉についても多少は頭に入れていた。初めて会った日に『もしかして』って思って、二度目に会ったときには確信してたよ」


なんだか畏れ多い自分の評価が聞こえたけれど、今はそれどころじゃない。

……うそ。
じゃあ、奥宮さんはずっと……私たちの嘘に気づきながら、何も言わずに会ってくれていたの?

どうして? どうして、そんなふうに──……。
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