かりそめお見合い事情~身代わりのはずが、艶夜に心も体も奪われました~
そして、約10分後。
車の外で並んで待っていた私たちの姿を見て、少し息を切らしたくれはは目をまんまるに見開いた。


「ことは……? うまく、いったの?」


私の顔、奥宮さんの顔、そしてしっかりと私の腰に回された彼の手を順番に確認するやいなや、おそるおそるといった様子で問いかける。

私が答えるより先に、右隣に立つ奥宮さんが口を開いた。


「きみが本物の“天真爛漫な妹”の立花くれはさんか。はじめまして」


ニッコリ満面の笑みを浮かべてそう話した奥宮さんに、くれはが唖然とした顔でまた固まる。

そうしてなぜか、どこか必死の剣幕で私に詰め寄ってきた。


「ことは、ほんとにこのひとで大丈夫?! なんか微妙に性格ひん曲がってそうだけど……!」
「くれは?!」
「はは、目の前で堂々と言うねー」


妹のとんでもない発言に慌てる私に対し、奥宮さんはのんびり笑っているだけだ。

くれはは奥宮さんから引き離すように、私の腕を掴んでぐいと自分の方に寄せる。


「どうも、ことはの双子の妹の立花くれはです。このたびは私のワガママで、大変ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。姉は私の頼みを聞いてくれていただけなので、どうか責めるなら私ひとりでお願いします」
「セリフと顔が合ってないんだけど、まあ、もともとことはもきみも責めるつもりなんてないから安心していいよ。むしろ、ことはと出会わせてくれたくれはさんには感謝したいくらいだ」


警戒心むき出しな表情のくれはと、どこか含みのある笑みを浮かべる奥宮さん。ふたりの間にはなんだか火花が散っているように見えて、真ん中にいる私はあわあわと狼狽えてしまう。
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